文系・工学系の学際・融合教育を目指して
教員
文系・工学系の学際・融合教育を目指して
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私はインドネシアの現代政治について研究しています。インドネシアは、多様な宗教とエスニックグループ(民族)から成る多様性に富んだ国であり、初めて訪れた人を包み込むような懐の深さがあります。歴史を遡っていくと、その独立の遥か以前から、他者への寛容の価値がコスモポリタンな社会を支えてきました。また、独立以降も、人口の9割近くを占めるムスリム(イスラーム教徒)のなかでも、宗教的少数派との対等な共存を謳う指導者や知識人たちが強い発言力を持ってきました。
他方で、「多数派のムスリム」の利益代表を標榜するイスラーム政治勢力はさまざまな組織、イデオロギーの潮流やエスニックグループに分かれており、政治的にはまとまってきませんでした。しかしながら近年になって、こうした勢力が政権を批判し、顕著な動員力をみせました。これに対して、現政権は彼らを「不寛容」で「過激」な勢力と見なしてその脅威を強調し、圧力を強めています。政権による脅威論はしばしば国内外のメディアによって無批判に報道され、同国政治への理解を歪めてきました。
今日、ソーシャルメディアの発達によって情報収集はこれまでにないほど容易になり、海外の事情もより身近なものになったように感じられます。しかし、日々流れていく情報の多くは、表層的かつ流動的なものです。また意図的な「フェイクニュース」でなくとも、特定の見解に誘導するようなものも少なくありません。
この現代社会において、ときに批判的な視点を持ち、情報を取捨選択しながら吸収していくには、まず物事の捉え方や分析の手法を学ぶことが不可欠です。私は国際総合学類で「政治変動論」や「アジア政治」という講義を通じて、東南アジア諸国における政治イシューをどのように理解し、分析できるのか、その枠組みを紹介しています。大学での講義をきっかけに、さまざまな争点について「なぜ」そのようなことが起きるのか疑問を持ち、自らその回答を探求してみてください。
また、コロナ禍で海外への渡航が難しかった時期も終わりつつあります。現地の空気を吸い、人々と話をしてみると、自分の先入観が大きく変わるようなことも多々あります。まだまだ慎重に行動する必要がありますが、少しずつ海外へ目や足を向けていってください。