文系・工学系の学際・融合教育を目指して
教員
文系・工学系の学際・融合教育を目指して
教員
国際総合学類で情報・環境分野で教員をしている岡瑞起と申します。私の専⾨は Artificial Life という研究分野です。⼈⼯「Artificial」と⽣命「Life」を合わせた⾔葉で、略して「AL」や「ALIFE」と呼んだりします。ALIFE を⽇本語訳すると「⼈⼯⽣命」となり、この⾔葉からフランケンシュタインのような⼈造⼈間をイメージする⽅も多いかもしれません。
ですが、研究分野としての ALIFE はフランケンシュタインではなく、⾃ら進化し続ける機械を作り出すことを⽬指しています。⼈間が作り出している科学技術の発展、あるいは 46億年もの間ずっと進化し続けている⾃然や⽣物のような「終わりなき進化(オープンエンドな進化)」を⼈⼯的に作り出すことを⽬指しているのです。それは「新しいものを⽣み出し続ける」あるいは「創造的になる仕組み」を機械で作り出そうとする試みということもできます。どうしたら創造性を機械に持たせることができるのかを探求しているのです。
そして、研究から明らかになってきた機械を創造的にする仕組みは、わたしたち⼀⼈ひとりの可能性を⾒つけ創造性を発揮するためにも役⽴ちます。機械の創造性に重要なことは⼈間の創造性にとってもヒントになることがたくさんあるのです。私が ALIFE の研究が⾯⽩いと思っている理由も、実験を通して創造的になるためのヒントを得られるからです。
現在、私の研究グループではソーシャルネットワークの分析を通じて「終わりなき進化」を⽣み出す仕組みに関する研究を進めています。新しいモノが常に⽣み出され、進化し続けるソーシャルネットワークは、まさに終わりなき進化を続ける⼈⼯システムとなっているのです。ソーシャルネットワーク上で誰とつながるか、どんな情報にアクセスするかといった違いがソーシャルネットワークでの創造性にどのような影響を及ぼすのか。創造性を⽣み出す集団とそうでない集団では、⼀⼈ひとりの相互作⽤がどのようにどのくらい異なるのか。こうしたことが研究を通して明らかになっていくことでわたしたち⼀⼈ひとりの創造性につながるヒントが更に明らかになってくると期待しています。
筑波⼤学では 2019 年度より全ての⼀年次学⽣に対して「データサイエンス」が必修科⽬となりました。⽂系・理系を問わず、どの分野においても経験や勘に頼った判断や意思決定から、データに基づいた客観的な判断や意思決定の必要性が⾮常に⾼まっているからです。その背景には、社会の変化が激しく先の⾒通しを⽴てることが難しくなっているということがあります。これまでの常識が覆され、既存の⽅法論が通じなくなることが多く経験や勘だけでは正しく現実を認識することが難しくなってきているのです。
時代によって必要とされるスキルは異なってきます。教育で提供する内容も時代の変化に合わせて変わっていく必要があります。ところが、最近は変化のスピードが速すぎるため教育カリキュラムが変化に対応できていないというのが現実です。⽂系・理系といった枠組みもそのひとつです。筑波⼤学でデータサイエンスが必須科⽬として取り込まれた背景にも、理系・⽂系を問わず情報スキルが必須スキルとして求められる社会に変化していることが関係しています。
そうした時代に何ができるか。それは⽂系・理系といった枠組みにとらわれずに両⽅を学ぶということです。⽂系に進もうか、理系に進もうか迷っているとしたら、それは当たり前の悩みです。時代がどちらも必要としているのでどちらか⼀⽅に決めるということがそもそも難しいのです。筑波⼤学の国際総合学類は⽂理融合型の教育カリキュラムを提供しています。どちらも学びながら新しい時代を⼀緒に切り開いていきましょう!