文系・工学系の学際・融合教育を目指して

教員

秋野先生について

私たちの同僚だった秋野豊先生は、1998年国連から派遣され、タジキスタン監視団として現地の平和交渉をリードするなか、殉職されました。

秋野先生

秋野先生は、常識にとらわれない「型破りの」行動派として知られ、桁外れの勇気、包容力を持ちながら、学問(知識+認識)と実践(知恵+行動力)を同時に遂行できる稀有な人でした。生きていれば、今日の混迷した日本に指針を与えるような大きな仕事を成し遂げたことでしょう。

秋野先生が残した言葉は、今もかつての同僚や、多くの卒業生の胸に刻まれています。

「常に“生きる事”を真剣に考えたい。何のために生きてきたのか?何を実行すべきなのかを常に問い詰めたい。そして、行動。行動が無ければ、腐ってしまう」

という秋野先生の姿勢は、権力者には威張らせず、他者には温かく、困った人がいれば身体を張ってでも助け、常に自らの行動によって人としてのあり方を示すという点で一貫していました。

十年の後、命日の2008年7月19日秋野豊先生の十周忌メモリアルコンサートがつくば市で開催されました。多数の卒業生、在校生、知人、市民がかけつけ、秋野先生の精神を想う大きなエネルギーの結集をみました。

秋野豊先生は亡くなっても、そのスピリットは国際総合学類に受け継がれ、今もその時空に存在しています。

秋野先生

新雪のようにまぶしく輝く人生もいいが、踏み固められた
雪のように最後までしぶとく残るのもまたいい

―秋野豊


秋野先生語録

脅かされず、踊らされず、踊る
交わって、味わって、群れず
動じず、しびれて、死なず

(1995年コンピュータ書き初め三部作)

人生はラグビーに似ている。グラウンドいっぱいに、自分という球を動かしたい。逃げずに勝負したい
(北海道新聞 1998年7月22日夕刊)

希望を持って生き、良き助言を活用し、自らを激励してください。人生は結構なものです。甘く見くびって生きましょう。人に対して威張るのは馬鹿でもできるのですが、馬鹿な奴には絶対に威張らせないのは天才のわざです。できるだけ、間抜けな顔をすることは重要です。しかしくだらないことにはこだわること。これが私の哲学です。さて。
(1992年刊行の筑波大学国際関係学類誌『明日のExecutive』より)

ここで正義がなされていないのを見て胸が痛む。だが、私は神に八つの困難と九つの苦難を与えてくれるよう祈った。今の自分にはそれがあると思う。だから、願いは果たされた。幸せか幸せでないかは、問題ではない。
(1998年6月、教え子の旭川大学佐々木りつ子氏らへのメールより、原文は英語)

A Greeting from Dushanbe
I now finally settled down in Tajikistan. Over the last weekend there was a lot of shelling, gun-shooting and explosion of hand-grenades. Some of them were quite near my flat. I live next the Presidential Office, which means that in peacetime I enjoy too much safety and order, while at war I enjoy a too much interrupted night sleep, as the P.O is one of the main attack targets by the opposition.

So far we have rainy days and it is not as hot as I was afraid of. This is a trouble, for the Japanese Government expects me sweat here a lot just in order to show how Japanese contribution to the cause of peace and prosperity in the Great Silk Roads is made not only in money term. Among Churchill’s famous “toil, sweat, tears and blood,” sweat is naturally the easiest thing for me. I am going to be a flying Political Affairs Officer, moving one place to another to gather information and analyze. Wishing to all the best, I remain,

Yours ever,
Yutaka Akino
(11 May, 1998)

主著

  • 1983 「独ソ開戦と英対ソ政策―偽りの同盟から大同盟への道―」(北海道大学大学院・法学博士論文)。
  • 1990 『世界は大回転する』(講談社)。
  • 1991 『欧州新地図を読む』(時事通信社)。
  • 1992 『ゴルバチョフの2500日』(講談社)。
  • 1992 ジョン・モリソン著/秋野豊監訳/赤井照久訳『ボリス・エリツィン』(ダイヤモンド社)。

その他、論文、エッセイ、講演、座談会、書評、多数。 

なお、秋野豊先生は、朝永振一郎博士、白川英樹博士及び江崎玲於奈博士、初代講道館館長嘉納治五郎先生とともに大学会館のギャラリーに顕彰されています。

国際総合学類教授 前川啓治