文系・工学系の学際・融合教育を目指して
教員
文系・工学系の学際・融合教育を目指して
教員
大学に入学する前から漠然と頭にあったのは、途上国の人々の役に立つ仕事がしたいということでした。
現代の日本がどうしてこんなに豊かで安全な社会になったのだろうと考えていた学生時代、明治期の国づくりに多くのお雇い外国人が貢献していたことを知りました。デレーケ、ムルデル、ファン・ドールンといった偉大な技術者たちが整備の対象としたのは川でした。都会の「何もない喧噪」から抜け出してよく時間をつぶしていた川が、物を運び、資源を供給し、文化を育み、生物たちのゆりかごとなってきたことに思い至ったとき、河川の計画を研究テーマにする決意が固まりました。 川は自然物でありながら人間にとって不可欠な存在でもあり、理系と文系の両方にまたがる対象です。上流の自然条件は下流の川に影響を及ぼし、下流の人間社会は上流の川に手を加えます。季節や歴史の積み重ねも川の表情にあらわれます。数えきれないほどの因果関係や利害関係を内に含み、進めば進むほど何が「良い」のか「悪い」のかわからなくなってくるような混沌とした感じ、そしてその混沌を切り開いていく手ごたえが今感じている魅力です。
時間の使い方を自分で組み立てられることは大学生の大きな特権です。この時期に、計画を立てて物事を進める面白さを実感してほしいと思います。予定どおりに進む充実感だけでなく、うまくいかなかったときや予期していなかった状況に陥ったときの失望、狼狽、恥ずかしさといった挫折の感情も人を大きく成長させます。壁にぶつかったとき、失敗したように見えたときの対処法を自分の中で増やしておくと、のちのち助けになるはずです。 大学での勉強は、学んですぐに使えるものばかりではありません。皆さんは何歳で人生のピークを迎えたいでしょうか。現在や近い未来の利害得失のみに目を奪われず、将来の自分を大事に考えて必要となる力を培ってください。いずれは自分のことだけでなく社会への還元という視点も持ってほしいところですが、無理に先走る必要はありません。まずは自分の実力をつけることです。