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国際総合学類4年次 平田里沙:国際公務員を目指して 在オランダ日本大使館 化学兵器禁止条約班におけるインターン

私は、筑波大学との交流協定に基づく、オランダ王国ユトレヒト大学法学部における交換留学中に、幸運にも、在オランダ日本大使館・化学兵器禁止条約(CWC)班で2か月にわたるインターンシップを経験させていただきました。CWC班でのインターンシップ業務の主な内容は、国際会議への出席、記録作成、化学兵器に関する資料収集とその整理などです。

“大使館”という言葉からイメージされる業務内容としては、多くの方々が「ビザの発行」や緊急事態における在外日本人の保護など、いわゆる領事業務を挙げられるのではないかと思います。しかし、大使館が担っている仕事は決してそれだけではなく、日本と相手国政府との交流を深めるための文化的交流、我が国を代表した外交実務など、非常に幅広い分野の活動があります。とりわけ、在オランダ大使館には、ハーグ(The Hague)という国際都市に存在する国連国際司法裁判所(ICJ)、国際刑事裁判所(ICC)などの国際司法機関を中心とした、国際法分野における業務、さらには、私がインターンシップを経験した化学兵器禁止条約の業務があります。

私見では、国際機関や大使館等の外交機関におけるインターンシップのメリットの第一は、「机上からではなく、自分自身で“外交現場”を体験することができたこと」と、まとめることができると思います。いくらグローバル社会化が進んでいると言われていても、実際には、私たちの日常的な生活において、「国家(national State)」を背負った外交的交渉の場面や、国家間国際組織での協議に遭遇する機会は、まだまだ少ないのではないでしょうか?そのような中で、国際会議などの場で各国大使がそれぞれの国の意見を分かち合い、国際社会における兵器統制のあり方について議論を交わす現場に立ち会うことができたのは、本当に有意義でした。特に今回は、年に3回開催されている化学兵器禁止機関(OPCW)の執行理事会にも参加することもできました。同理事会は、41の締約国から構成される大規模な国際会議体・フォーラムであります。新聞等のメディアによる報道などを通してしか接することのできなかった現場に立ち会うことができ、本当に感無量でした。各国の政策的な立場と現代国際社会の縮図、またその中での我が国のポジションなど、一般の書物やキャンパスにおける講義からは感じることができなかった“臨場感”、また、日々変動する国際社会の様子を垣間見ることができました。

国際インターンシップを通した第二の利点は、就職を希望する仕事に対して求められる要件・条件を、自分自身で確認し、そして知ることができたことです。国際機関で働く条件として、言語能力や各々の分野における高い専門性がしばしば挙げられます。私自身、将来、国際機関で働くためには、さらに高いレベルの専門的用語やタームを駆使できる語学の運用能力が必要であると痛感しました。インターンシップ当初は、各会議で用いられる化学兵器に関連する特殊な用語や、各国実務者の独特な英語での表現・言い回しに苦労することも、しばしばありました。

それに加えて、私は、国際人としての積極性ないし積極的思考(positive thinking)、礼儀・挨拶なども不可欠であると感じました。というのも、国際社会や外国といっても、実際にそれを創り上げているのは、私たち一人ひとりの個人(individuals)であり、円滑な人間関係の構築が、多くの外交交渉の現場や大使館における現地の人々との交流を支えていると、強く実感したからです。

最後に、私は、大使館の職員の方々、また他国のインターンシップ生と交流を持つことができたことも、大きなメリットだと感じました。将来的に国際的なフィールドで働くことを考えているのであれば、多種多様なバックグランドを有する先輩方やインターンシップ生の経験談から学び、異なる考え方やアプローチ・方法論を知ることができるのは、非常に大きな魅力の一つです。
実際はまだ利用事例も少ないと思われる海外インターンシップ活動ですが、「百聞は一見にしかず」とも言いますように、時には実体験を通して学ぶことも多くあるのではないでしょうか。
今は、この貴重な経験を今後の糧にして、国際総合学類での勉強や卒論、その他の活動の進展に結びつけたいと考えています。

(2013年7月23日 談)