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国際総合学類4年次 田村英子:日中韓三国協力事務局におけるインターン活動報告

「日本と中国・韓国の懸け橋になりたい」―そう強く意識し始めたのは英国エディンバラ大学への交換留学が始まってすぐ、昨年の10月頃です。ヨーロッパの学生と過ごすなか、とても驚かされたのは、EU諸国間交流の活発さでした。彼らは自由に域内で学び、交流を重ね、確実に結束を強めていました。一方で、アジアの現状を考えたとき、思い浮かぶのは、日中韓の「深い溝」でした。以前より、在日コリアンの権利や日本とアジア諸国の関係に関心を持っていた私は、筑波大学入学以来、ソウルで国際学生フォーラムに参加したり、ハーバード大学のアジア国際関係会議に出席するなどしていました。そうするなかで、数多くの中国・韓国人学生との素晴らしい出会いに恵まれ、エディンバラでも実に多くの友人を得ました。しかし、連日目にするニュースは、領土問題を巡るいざこざや歴史を巡る論争ばかりでした。個人間での交流は進んでも、なぜ国同士の和解にいたらないのか?この三国が理解し合うためには、どうすればよいのだろう?そう考えるうち、行きついたのが、現在のインターン先である日中韓三国協力事務局です。

日中韓三国事務局(Trilateral Cooperation Secretariat: TCS)とは、北東アジア三国、つまり日本・中国・韓国三か国間の協力を促進するべく、2011年にソウルに設立された国際機関です。出資元は各国政府であり、職員も各国から派遣・採用されています。職場言語は英語で、インターン生も同じです。私にとってTCSで三か国の関係改善のために働くことはまさに夢であり、そのTCSで初めて募集されたのが現在私が参加する「青年大使プログラム」でした。三か国合計600名以上の応募の中から、27名の青年が選出され参加しています。前半2週間と後半4週間のプログラムに分かれており、前半では韓国外務省・各国大使館・地方政府など政府機関、EU・ASEANセンター・国連などの国際機関、および韓国のシンクタンクや民間企業などを訪問しました。また各方面から講師を招き、日中韓関係や外交テクニックなどに関する講義も受講しました。後半からはさらに参加者が絞られ、各国5名、計15名の青年がPolitical Affairs ・Economic Affairs ・Social and Cultural Affairs ・Administrationの4部門に分かれ実務に従事します。

前半の2週間を終え実感しているのは、参加者の言語能力の高さと国際性です。母国語+英語+日中韓語から一つ、3か国語話せる参加者が大多数です。所属大学も、母国ではなくアメリカなど様々。英語が出来るところで、それは当たり前で何も特別ではないという状況に、イギリス留学から帰ったばかりで英語力に自信のあった自分は、初日から出鼻をくじかれる思いをしました。また参加者の年齢層も思った以上に高く、私は後半に進む参加者15人の中では最年少で、上は28歳までとなっています。経験豊富な彼らから学ぶことは実に多く、刺激的な毎日を過ごしています。職員も実に個性豊かな方ばかりで、英語と日中韓3か国語全て操る人もいれば、元外交官だけれども、大学卒業まで海外へ行ったことがなかった人など本当に様々。唯一共通しているのが、日中韓のより良い未来を信じてみな前向きに努力をしているということです。

TCSで過ごしていると、三国の不仲が嘘のように感じることが多々あります。しかし実際は三か国首脳会談すら開催されず、中国では日本製品不買の動き、ソウルの街を歩けば反日デモが毎週のように行われています。「日本が好きだって、この国で正直に言うのは難しいんだ」。親しくなった韓国人参加者が、流暢な日本語でそう語ってくれました。日中韓の関係には、まだまだ問題が山積されています。北東アジアの未来のために、自分に何ができるのか?自分の将来を見つめながら、残りの4週間をより実りあるものにすべく身を引き締めて臨みたいと思います。

(2013年7月22日 談)