文系・工学系の学際・融合教育を目指して

卒業後

21期生 木村 聖:独立行政法人 国際協力機構 ケニア事務所 所員

「リアリティ」を求めて

高校2年生の時、テレビを通して知った米国同時多発テロ。映画のワンシーンでなく、これが「現実」だということに強烈な衝動を感じた私は、翌年“国際”総合学類の門を叩いた。入学後、講義での学びに加え、魅力的な先輩・同級生・後輩と過ごす日々。学生が自らの成長の機会を求め主体的に行動し、その行動の多様性(留学、インターンシップ、ボランティア等)が許容される環境に身を置いているうちに、次第に私は、ここは国際“総合”学類であることを強く意識するようになった。

皆がこぞって海外へと出て行くなか、私はひたすら日本を巡った。当時の私にとっては、過疎と少子高齢化に悩まされる日本の田舎も、貧困にあえぐ開発途上国の農村も同じだった。新聞やニュースで日夜報道される表層の情報に満足することなく、そこに暮らす人々の「リアリティ」を求めて行動する姿勢は、4年間の在学中に得た貴重な財産である。

卒業後は、これまで見聞きした日本の経験・現状をもとに、既成の欧米の開発理論にとらわれることなく、それぞれの開発途上国の「実態」とニーズに即した研究活動を志向し、大学院へ進学。在学中には、ケニアでのフィールドワークも経験した。修士課程修了後、JICA職員として働く機会に恵まれ、日本が実施する開発援助の一端を担うこととなった。これまで、内戦終結後の復興・開発段階にあるシエラレオネ、リベリアに対する、将来の協力に関する計画策定や、ガーナにおける民間企業や地方自治体との連携事業等を担当した。現在は、大学院生時代に訪れたケニアに赴任し、教育セクターにおける事業管理、援助調整、将来の協力に向けた情報収集を担当するとともに、兼轄するブルンジでの事業実施に必要な後方支援業務を行っている。

日頃の業務では、問題の表層だけにとらわれず、真の「現場」のニーズは何か、またJICAとして何ができるのかを常に考えるように心がけている。「現場」で見聞することはスナップショットであり、その状況をどのように判断するかは、判断者の知見や分析力に負うところが大きいことを、上司や専門家との協働を通じて痛感することが多い。 言うまでもなく、現実世界はただ一つの実体としてあるのではなく、文化的に構造化された複合的な世界によって構成されている。国際総合学類で過ごす日々は、こうした現実世界で起こる様々な事象を、自分なりの「リアリティ」として捉えるための、判断基準の「原石」を探し、磨きをかけるには格好の「場」ではないだろうか。