文系・工学系の学際・融合教育を目指して

卒業後

17期生 儘田由香:(特活)ハンガー・フリー・ワールド 国内事業担当職員

私は今、世界から飢餓を終わらせるために活動する国際協力NGOで働いています。国内の啓発活動の担当者として、世界の飢餓の現状や食料問題、私たちの暮らしや食生活とのつながりをわかりやすく伝え、ひとりでも多くの人に解決に向けて行動してもらうことが私の仕事です。具体的には、学校の授業や国際協力イベントでワークショップを行ったり、冊子や本を執筆・編集したり、他のNGOや国連機関と一緒に取り組む「世界食料デー」月間の事務局担当として、ネットワーク全体をまとめたりしています。
自分が本当にやりたいと思えるこの仕事に就いてから、3年が経ちました。そのぶん責任は重いですが、「仕事が楽しい」と思えることに幸せを感じながら、毎日いそがしく働いています。大学を卒業してからこの仕事に就くまで、企業などでも経験を積みましたが、今の私の原点はどこにあるかと振り返ると、大学時代だと思っています。
なかでも、今、勤務している国際協力NGOの青少年組織のメンバーとして、筑波大学を拠点に活動するグループのリーダーを務めたことは、私にとって大きな糧となりました。十分な知識が既にあり、語学も堪能な同級生に囲まれながら、努力だけではどうにも乗り越えられない壁にぶち当たったところから私の大学生活はスタートしましたが……学んだり、議論をするだけでは世界は何も変わらない。そう思って始めたのがこの活動でした。先輩がすぐに引退して教えてくれる人もいないなか、イベントの企画も初めてで、最初は何もかもが手探りでした。また、当時は今ほどNGOやボランティアが身近ではなかったこともあり、冷たい言葉をぶつけられることもよくありました。それでも伝えたいことがあるときにはどうすればいいのか。試行錯誤しながら、失敗しながら形にしていく経験を大学生のときにできたことは、その後の社会人生活を送るうえでも、大きな原動力になっています。
また、大学3年生のときにマレーシアに1年間交換留学したことも、私にとって大きな転機でした。当時は大学2年生からゼミが始まりましたが、ちょうどそのときに文化人類学ゼミが開設されました。初代ゼミ生として、少人数ながら質の高い議論に参加できたことで、「学ぶ」ことの本当の楽しさを教えてもらいました。そんななか、「東南アジアのどこかの国をフィールドにするのであれば、実際にそこに住みたい」と、決意した留学。英語も学びたかった私にとって、マレー語ばかりが上達してしまったことは予定外でしたが、多民族国家のこの国で、洗濯機も、クーラーも、冷蔵庫もなく、野生の猿が廊下を走り回る学生寮でマレー人のルームメイトと共同生活をしたり、ときには実家がある田舎町に連れて行ってもらった1年間は、とても貴重な体験でした。自分とは全く異なる価値観を理解し、お互いに認め合うことの大切さを、深く理解することができました。
NGO職員という仕事柄、毎日のように大学生のインターンやボランティアと話をします。大学生の彼らからは、「いそがしい」「時間がない」とよく聞きますが、社会人になってからの生活はそれに輪をかけていそがしく、自由に使える時間は本当にわずかです。たくさんの機会に恵まれている東京の大学生と比べてしまうと、新しい出会いや参加の機会は、少しだけ限られているかもしれません。しかし、与えられるのを待つのではなく自分から行動することの大切さや、規模は小さくてもゼロから自分の力で形にしていくことの楽しさは、筑波大学にいるからこそ得られたものだと思っています。あえて、ここで学ぶことの意味や楽しさをかみしめながら、貴重な大学生活を大切に過ごしてください。