文系・工学系の学際・融合教育を目指して

卒業後

21期生 西山 嘉倫:防衛省 防衛政策局調査課戦略情報分析室所属 防衛事務官

今、防衛省内部部局で国際軍事情勢を扱う部署に配属され、下っ端ながら日本のインテリジェンスの末端を垣間見つつ仕事している。卒論では事例研究の対象だったスーダンへ、このたび政府が自衛隊を派遣するため、目下現地の情勢分析を手伝うことが自分の仕事である。そんな幸運な偶然がなくても、やっていることは何だかどれも、結局は大学時代の延長線上にある気がしてならない。

卒業を年明けに見据えながら、ゼミで後輩との共同研究発表に取り組んでいた頃、それまでになく行き詰まり、後輩をうまくリードできずに苛立っていたのを思い出す。この手のプロジェクトは何度もやってきて、要領は心得ているはずなのになぜだろうと思った。先生に私が陥っていた問題点を的確に指摘されたとき、最終学年にもなってそれに気付けなかった自分が悔しくて、涙が出た。

自分は本当に大学で学ぶべきことをきちんと学んでこられたのか、到底自信はない。一行政官として歩み始めた自分はあまりに無知で、毎日ふがいなさを感じている。けれど、もうあの頃のように自分を答えに導いてくれる先生はいなくて、とにかく思い出全部抱え、あとは自分を信じて頑張りなさいと背中を押し出された。

研究発表のために徹夜したこと、サークルの運営に試行錯誤したこと、友達の誕生日サプライズに工夫を凝らしたこと。実際、思い出は瑣末なものばかりだけれど、ただひとつ、確かに今の自分を形作り、支えていると言えるのは、それぞれの場面で一緒にいた人達との繋がりだ。そして彼らと衒いなく渡り合い、得がたい人間関係を築いてきたと思えることが、今の自分の静かな自信に繋がっている。

私がこれから生きるこの場所は、もしかしたら、ろくでもない側面もたくさん持ち合わせている組織なのかもしれない。でも、やりたいことがあるなら、組織の歯車になりながら偉くなるしかない。やりたいことを実現できるくらいに偉くなるしかない。それまで、今の志を持ち続けていられるか、今見ている世界の色の鮮やかさを覚えていられるか、不安がないわけではない。だからこそ私はこれからも、私が支えられてきた人との繋がりの中で、自分の在り様を確かめ続けていくのだと思う。